うちは電子カルテなんですが、本日ある患者さんの術前の診察に行こうとすると看護師のアナムネがまだ終わっていない。
ありゃ、入院したばかりだからまだできてないのかな〜と思ったのですが、若い子だし、そんなに合併症などはないだろう、もしあったとしてもその場で聞けばいいや、と思いながら訪問しました。
自己紹介をすませ、問診を始める。隣にお父さんと思われる男性がいて少し固い表情をしている。ははーん、手術初めてだから緊張してるのかな?ここは一つ、緊張をほぐす感じで。。。
私
「手術は初めてですか?」
父
「もう8回目です」
大失敗。何度もしてるから表情が固かったのね。カンファレンスでそれを言ったら部長に「かっこ悪〜」だって。
。10年経ってもこういうミスは時々やってしまう私。
今日抄読会が当たってたんですけどね。
前日の夜、自宅で原稿を作成し、USBメモリに保存。明日(つまり今日)早めに出勤してプリントアウトして、コピーするつもりだったんです。
朝出勤して、USBメモリを開けてみるとファイルがない
。
やばい、夜寝ぼけながら作成したから保存する場所を間違えてハードディスクに保存しちゃった!現在の時刻は7時50分。抄読会が始まるのは朝8時。
大丈夫、何とかメールで送ってもらえれば間に合う。あせるな俺。麻酔科医たるもの、何事にもあわててはならぬ。でも、場所は医局、すでに沢山の医師が出勤してきている。こそっとね、こそーっと。
ピ、ポ、パ。ぷるるるる、ぷるるるる、、、、(早く出ろ、カマン、カマン、、、
)
嫁「もしもし、○○です。」
うちの奥さん、電話に出ないことが多いので、やった〜
天は我に味方しているっ!と思いました。でもそれを表には出さず、隣で「朝からどこに電話している?」という表情の上司に悟られないように…
私「もしもし、俺だけど」(ぼそぼそ声)
嫁「はい?どちら様ですか?」(素っ頓狂な声)
私「俺だって」(ぼそぼそ声で、しかもあせった声で)
嫁「え?誰ですか?」(疑っているような声)
おのれ〜なんで分からんのじゃ〜(ゴゴゴゴゴゴ)
←ぼそぼそ声だから誰だか分かんない、オレオレ詐欺かと思ったらしい。
こんなやり取りで3分ほどタイムロス。やっと分かってもらえた後、パソコンを立ち上げ、メールソフトを起動してもらう。ここまでで2分ロス。
厳しいか?残りあと5分。すでに若手の医師は集合しつつある。大丈夫、副院長が来なければ始まらない、あせるな俺(でも汗びっしょり)。
メールアドレスを指定し、昨日作ったファイルを見つけてもらい添付。大丈夫、ここまでくればあとは送信するだけ。何とかなるっ!。
私「送信してくれ」
嫁「…送信できませんって出てくるよ」
なに〜〜〜!!? そんな馬鹿な。
何度かやり直してもらい、メールアドレスを変えてやってもらうがやっぱり駄目。くっそ〜、ここまで来て…。 いや、あきらめるな、すこーし待ってもらうことになるかもしれないが、何とか…。そのとき電話の向こうで娘の声が
「ママ、おしっこ〜」
あきらめよう
さすがに観念しました。皆さんには事情を説明し、謝罪。延期してもらうことにしました。というわけで、今日読むつもりだったのがこちら。
救急医A「救急車が来ます、50歳男性。突然の心窩部の痛み。バイタルは安定しているが、現在も痛みは続いている様子です!」
周囲に緊張が走る。受け入れの用意を始める看護師、研修医たち。
看護師A「どこから来ますか?」(到着時刻を予測するため)
研修医A「そこのエレベーターからだと思います!」
えーん
そういうことをいってるんじゃないの
トラックに重さ250kgの荷物をクレーンで積み込む作業中、荷物とトラックの荷台の間に挟まれた、という人がやってきました。
金属で出来ていた荷物だったため、首や胸の部分に擦過傷がざっくり。意識消失などはなかったみたいで、事故のことを詳細に覚えておられました。
痛みのある部分も首と胸、とはっきり答えて下さいました。バイタルは問題なし、両肺の呼吸音も左右差なし。お腹の方も一応触ってみたけど、痛みは訴えなし。
まあ、重症感はないなあと思いながら念のため胸部CTを。ついでに腹部のCTも追加。案の定、気胸も肋骨骨折もなし。まあ、痛みはあるようですが、打撲によるものだから自然消退を待つのみかなと思っていたのですが。
労災事故でしょうし、診断書なんかも後々必要になるだろうから念のため外科の診察も受けてもらおうと、外科レジデントのM先生をコール。
M先生、CT画像を見ながら、腹部のところで目が止まりました。
「何か、この辺りのもやもやが気になりますね」
「そう?そう言われればなんとなくもやもやしているような・・・」なんて話してたんですけどね、そこへ放射線科のI先生からコールが
「先生、さっきの人だけど、脾臓破裂の疑いがあるよ。すぐ造影CT撮ったほうがいい」
マジですか?
結局その方は脾臓破裂を起こしていて、緊急で塞栓術を行いました。診察の時は全然お腹は痛がっていなかったんですけどねえ。
挟まれ事故の時はたとえお腹を痛がっていなくても、胸だけを挟まれたと本人が言っても腹部臓器の損傷を見落としてはならない、ということですね。それにしてもM先生ありがとう、帰宅させてしまうところでした
。
ガラスによる切創は時として非常に深くなる場合がありますよね。
そんな患者を診るたびに「ルパン三世が窓ガラスを破って外に飛び出たりするのは絶対嘘だ」と思います。
3年目のある日、ハンドサージェリーという言葉も知らない頃、一人の外傷患者さんが救急車で運ばれてきました。ガラスで右腕を切った、とのことですでに現場で大量の出血があったそうです。
顔面は蒼白、ショック状態。前腕の内側に20cm以上はある、かなり深い傷でした。救急外来というものを初めて経験し始めた、ぐらいのときだったので何をしてよいか全く分からなかったのですが、一緒にいた救急部のドクターがすばやくラインを取り、大量の輸液と大量の鎮痛剤でたちまち状態を安定させました。
しかし、傷口からは動脈性の出血が続いており、神経や筋もズタズタであろうことは私でも分かりました。患者さんは料理人であり、特に手を大事にしなければならない職業の一つ。
その病院は人工関節や脊椎手術では有名だったのですが、その手の手術はあまり手がけていなかったので、「こんなのうちの整形外科の手に負えるのかな?」と不安でした。
そこへやってきたのが着任したばかりの整形外科M先生。診察を終えるとすばやく手術の準備を始めました。着任したばかりだったため、使える顕微鏡はどれか、と手術室に問い合わせをするところからでしたが、手術はスタート。
僕が考えていたよりも傷は重く、屈筋群は全て断裂、神経も正中神経を残して全て断裂、動脈は2本とも断裂していたみたい。はたして・・・。
そこで初めてハンドサージェリーと言うものを見ました。顕微鏡で神経、筋、血管を次々に縫合。素晴らしかったです。これは他の整形外科の分野とは一味違うものだと思いましたね。それがM先生の鮮烈デビューでした。かっこよかった。
その患者さんは無事に復帰し、時々レストランの招待券が送られてくるらしいです。


。また、日常の診療の中で体験した面白い話、みんなで持ち寄ればきっと楽しいコーナーになると思います
。言うなれば